
第一回
就活ゼロのバンドマン、41歳でEAPの世界へダイブ②
この記事は「第一回 就活ゼロのバンドマン、41歳でEAPの世界へダイブ①」の続きです。
<資格との出会い>
伊井 山下さんは企業の中でずっと活動をされてこられた方だとお伺いしましたが、そういった中で家族カウンセリングや家族心理というのはマイナーなイメージがあるのかなと思うのですが、どういった接点で日本家族カウンセリング協会の資格に出会われたのかが気になっています。
山下 まず私はどちらかというと実践から入って必要に応じて資格を取っていくタイプなんですけど。
先ほどお話したように、カウンセラーとしての私の師匠はいきなり実戦をさせるタイプの人でした。そこで学んで実践を積んで、やっぱり資格が必要だということで、産業カウンセラーを取って、公認心理師も取りました。
その流れの中でまず出会ったのはブリーフセラピーなんですよね。産業分野のEAPは特にブリーフセラピーと非常に相性が良いです。独学でブリーフセラピーをいろいろ学びだして、そのルーツである家族療法も勉強しました。
家族問題というのは産業分野でも関係が深く、特に「休職する」「復職する」という判断のサポートをすることもあるんですけども、メンタルダウンする・しないの境目のところで、よくよく辿ると家族問題がクリアになっていない、みたいなこともあったりします。「復職しようと思う。ただ、本当はもうこんな会社には戻りたくない。辞めたいんだけども、妻が許してくれない」というような話で、要するに家族が絡んでくる、ということも実際にあります。
ブリーフセラピーの流れからシステムズアプローチ*1であったり、組織にも応用ができるところもありましたので、そのルーツである家族療法も学びました。それから、実際の家族問題そのものも扱ってみたいというところで、いろいろ情報を常に集めてる中で日本家族カウンセリング協会というものがあって、家族相談士を知りました。
知ったときはまだコロナ前だったので、対面の授業講座だったんです。最初に調べた時はそれこそ吉川悟先生や東豊先生が直接教えてくださっている時期があったと記憶しています。行きたいと思ったんですが、ちょうどコロナを挟んで、それ以降はもう完全オンラインになってしまって、そのタイミングで受けました。そのような流れで家族相談士を取りました。
伊井 いろいろ調べる中で、家族相談士のどこにビビッときましたか?
山下 ブリーフセラピーやシステムズアプローチのルーツ的な位置づけであるというところがやっぱり大きかったと思います。
伊井 一番基本的なところを学べそうだったというか。
山下 おっしゃる通りで、実際に家族心理学というところを中心に見てもそういうカリキュラムが載っていますのでどれを見ても興味深いというところで飛びついた形です。
<家族と関わるケース>
伊井 EAPをされている中で家族と出会うとか、あとは出会う必要が出てくるようなシチュエーションはどういう時だとお感じになられていますか?
山下 基本的にEAPでは、従業員本人に加えてご家族も利用できますよという体制をとっているところが多いんですね。私が関わってるところもそうなんですけども、それはやっぱり良くも悪くも家族の影響というのはありますので、家族が一番の支援者となるというケースもあれば逆に家族の影響でメンタルが回復しないということもあるんですよね。
EAPでは「家族もサポートします」という体制になってるので、従業員自身が「私は問題ないんですけど妻がこんな状態なんで妻をカウンセリングさせたい」とか「娘が大学受験でこうなっているのでちょっとカウンセリングを」みたいに、家族をこっちにリファーしてくるというケースもあるんです。
実際に多いのはメンタルダウンしたという方のケースで、この家族と会った方がいいなというのは、家族が誤解をしている場合です。例えば鬱や適応障害ということで休むとなった時に、家族がしっかりとした第一サポーターとして機能してる方の回復は早いんですけども、その逆の場合もありまして。
例えば事例で話しますと、その方は鬱になってしっかりとした休養が必要なタイミングだったんですけども、実家暮らしで母親が「いつになったら(仕事に)戻れるんだ」と。回復の過程で一見すると怠けているように見えてくるわけですよね。何もしなくてぶらぶらしているように見えてしまう。
そして、いつ働くんだというプレッシャーがまた本人の復職を妨げるような状況があった時に、『家族の方にこちらからきちんと状況をお伝えしましょうか?』『鬱ということの理解であったり、どういうサポートがあるとより早く回復しますよということを、私の方から伝えましょうか?』というような提案をすることもあります。
電話だったらちょっと代わってもらったり、オンラインであれば一緒に参加してもらったり、対面の場合だったら相談室に来てもらったりします。大体ご家族の方も心配しておられるので「私もどうサポートしていいのか聞きたい、話をしたい」というケースが多いんです。
心理教育的な形で『こういう状態ですと、我々はこう見立てていて、今後こういう風になると思っています』ということだったり『こういうサポートがあるとありがたいです』ということをお話して理解していただくということがEAPの場合では一番ノーマルなケースですかね。
伊井 心理教育というところでの出会いが結構多いというような印象なんですね。
山下 そうですね。メンタルをやられるっていうことを聞いてはいるけれど、実際に深いところまで理解されていなかったり、例えば心療内科に行けば治るものだと思っておられたり、薬飲めば治るものだと思ったりするので、そうじゃないですよということをお伝えしていくことになります。
次回は6月8日(月)10時更新予定です
*1:「システムズ•アプローチは人間の行動の問題を理解するために多元的な枠組みを提供する( 細胞レベル、器官レベル、生体レベル、集団レベル等の枠組み)。 システムズ•アプローチではその対象がスプラシステム(環境システム) との関係で有効に理解することができるという立場をとる。」遊佐安一郎(1984), 家族療法入門 システムズ・アプローチの理論と実際, 星和書店